アイゼンハワー

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 ルネサンス82   
 上陸作戦のビラ  
 さて、今回、アメリカ創価大学の関係の方々が、貴重な一枚のビラを届けてくださった。それは、何と、あの史上最大の作戦とうたわれたノルマンディー上陸作戦の際、上空からフランスの市民に撒かれた(フランス語の)ビラである。表には、大きく「連合軍が上陸する」と記され、ナチスから民衆を解放するために、連合軍がいよいよノルマンディーに到着したことを劇的に告げている。このビラは、まさに、一九四四年六月六日のその日、連合軍の飛行機によって、敵の戦線を越え、田園地帯一帯に散布された。数千枚が配られたようだが、現在では、ほとんど残っていない。そのまことに貴重な一枚を、今回、届けてくださったのである。改めて、心より感謝申し上げたい。ビラの裏には、連合軍のアイゼンハワー将軍(のちのアメリカ大統領)が、勇敢なるフランスのレジスタンス(抵抗運動)の戦士と国民に呼びかけたメッセージが記されている。  
 次元は違うが、今の私(名誉会長)どもの「非暴力の戦い」にも、力強く共鳴する言葉である。  
 「すべての愛国者たちよ!男性も女性も、老いも若きも、最後の勝利への行進において、役目を果たさなければならない。  
 この上陸は、ヨーロッパを解放する作戦の始まりにすぎない。  
 我々は、偉大なる戦いの瀬戸際に立たされている。我々は、自由を愛するすべての人々に、“我々に加われ!”と言いたい。  
 我々の信念を揺るがすものは何もない。  
 何ものにも、我々の前進は止められない。  
 我々は、ともどもに勝利する!」  
   
 名将の覚悟  
 昨日、私(名誉会長)は、ノルマンディー上陸に際して、アイゼンハワー将軍(のちのアメリカ大統領)が、フランスの市民に送ったメッセージについてスピーチした。すると、それを受けて、さっそくアメリカの知性派の青年が、アイゼンハワ- 将軍のあるエピソードを報告してくださった。  
 「指導者の責任感」という意味で、示唆に富んだ歴史であり、その青年の話を、そのまま紹介させていただきたい。  
 あの名高い“史上最大の作戦”(ノルマンディー上陸)にあたって、最高司令官であったアイゼンハワー将軍は、いったい、どのような覚悟で臨んだのか。実は、将軍は「作戦が失敗した場合の声明」まで用意していた。それは、鉛筆書きで、こう残されている。(ノルマンディーの)上陸作戦は、十分な足場を確保することができず、私は軍隊を撤退した。この時期に、この地点を攻撃するという、私の判断は、入手可能な最高の情報に基づいて下されたものである。  
 空軍と海軍は、力の限りを尽くして、勇敢に義務を果たしてくれた。もし、このたびの作戦に落ち度があり、非難されるべきことがあれば、それは、すべて私一人の責任である」と。
   
 「万が一」に備え  
 実際には、作戦は大成功を収め、この声明を発表する必要はなかった。しかし、このように、万が一、失敗した場合にも備えておくという、指導者の周到にして細心の心配りがあったからこそ、あの快挙が成し遂げられたと、見ることもできる。いかなる戦いも、事前の準備で決まる。どのような局面にも対処していけるよう、万全の態勢を整えておく一。そうした中心者の透徹した責任感と、人知れぬ努力があってこそ、初めて人々を守ることができる。勝利を開くことができる。飛行機にしても、アクシデント(事故)に備えて、かわりの空港までの燃料、またホールディング(悪天候などの場合、空港の上空で円を描きながら待つこと)のための燃料、それに加えて、予備の燃料まで積んでいる。  
 人知れぬ努力もせず、何の手も打たずに、ただ組織の上に乗っているだけでは、指導者失格といわざるをえない。
   
 皆を信頼して皆の力を出す  
 いずれにしても、アイゼンハワー将軍のこの声明からは、部下たちへのいたわりとともに、指導者の責任感が、ひしひしと伝わってくる。彼が、自分に権力を集中するのでなく、自分のもとの指揮官を信頼し、彼らが力を発揮しやすいように指揮をとったことは有名である。彼は、常に、指揮官たちの意見に積極的に耳を傾けた。しかも、自分自身の功績にはこだわらず、部下たちをどんどん前に出して、彼らが栄誉を受けられるようにしたのである。  
 手柄は惜しみなく部下に譲る一方で、何かあった場合は、潔く、すべて自分が責任を引き受ける。だから、将軍のもとでは、皆、思う存分、戦うことができたという。また一丸となって、将軍の心に応えようという団結が生まれたとされている。あのノルマンディー上陸作戦の陰に、こうした名将軍の采配があったことを見逃してはなるまい。今は、深き責任感の大指導者が、あまりにも少なくなってしまった。エゴと保身と無責任の風潮は、まことに残念でならない。

 


 

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