アンナ・パブロワ 今日より81
ロシアの名バレリーナ、アンナ・パブロワ(一八八一〜一九三一年)が来日した時(一九二二年=大正十一年)、彼女によって世界的に有名になった「瀕死の白鳥」(サン・サーンス作曲)を披露した。踊り終わった。幕が下りる。その間、彼女は、ずっと息を止めていた。まったく動かない。激しい動きの後なのに、呼吸をしている様子がない。それを見た、歌舞伎の名優(六代目尾上菊五郎)が激賞した。しかし、もしも幕が下りてこなかったら、どうするのか ― 。
アンナは答えた。「幕切れは瀕死ですから、もしも幕が下りてこなかったら、そのまま死ぬつもりで踊っています」
天性の才や環境だけで一流になった人はいない。文字通り「真剣勝負」を繰り返した修羅場の数が、人を鍛え、本物にしていく。