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今日より78
“困難も冒険”とアンネの勇気
「この日光、この雲のない青空があり、生きてこれをながめている間、わたしは不幸ではない、と心の中で思いました」(皆藤幸蔵訳『アンネの日記』、文曇春秋刊)。
これは、有名な『アンネの日記』の一節である。
悲劇の少女・アンネ。彼女はナチスの追及を逃れ、隠れ家の厚いカーテンに息をひそめながら日々を送っていた。外にも出られない。いつ敵が襲いくるかもしれない緊張と恐怖。文字通り、不幸のどん底である。しかし、彼女の胸は晴れていた。心が押しつぶされそうな境遇の中でも、未来への希望を失わない。正義を、真実を綴り残したいそんな願いからだったのだろうか、新聞記者を夢見る。また、童話を書いてもいた。どんな状況にあっても、希望を手放さない。その人こそ、真の「強き人」である。
不幸そのもののように思える境遇の中からも、幸福を生み出していける人である。 おしゃまで、おしゃべりだったアンネ。その太陽のように明るい笑顔が、周囲の人々をも、どれほど勇気づけたことだろうか。境遇をいくら嘆いても、問題は解決しない。かえって自分が惨めになるだけである。幸・不幸を決めるのは、環境ではない。あくまでも自分自身である。自分自身の勇気である。
アンネは当時の生活について、「わたしは若く、健康で、大きな冒険の中に暮らしています」(前掲書)とも述べている。
恐怖に息がつまりそうな状況さえ「冒険」と呼ぶ、意志の強さ。大胆さ、魂の気高さ。彼女は、最後まで自分の理想を捨てなかった。人間が「善」なる存在であることを信じ続けた。
そして“私は決して悪に負けない。屈しない”との彼女の叫びは、今なお、世界中の人々の胸に生きている。ナチスは彼女の命を奪った。しかし、その魂の言葉まで奪い取ることはできなかった。
アメリカのルーズベルト大統領(フランクリン・ルーズベルト。第三十二代大統領)は、二年以上にわたる隠れ家生活で、アンネが遂げた人間的成長をたたえながら、こう述べている。「アンネの日記は、人間の精神は終局において崇高な輝きを見せるものだということをはっきりさせている。この人たちは、毎日恐ろしい屈辱的な生活をしながらも、決してあきらめなかった」(前掲書)と。
厳しき状況の中でこそ、人間は打ち鍛えられるものだ。平々凡々と、「鍛え」も「向上」もなく生きていて、人生の険しき山坂を登れるはずもない。高き峰を登るには、それだけの困難が伴う。当然の道理である。この峰から、より高きあの峰へ。困難を踏み越え、一つ一つ、登攀していくことだ。峰を越えゆくほどに、視界は広がり、人生の味わいは深まりゆくのである。
ともあれ、圧迫に耐え、青春の炎を燃やした一人の少女。その生命の軌跡は、永遠に朽ちない。
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