3 産業革命
「声なき革命」 ─ 19世紀中ごろまでにイギリス社会を一変。
第2次「囲い込み運動」を内容とする「農業革命」
18世紀中ごろ島国イギリスを、数十年で「世界の工場」に押し上げた力は、この国でおこった一連の技術革新だった。多くは、現場の職人や町の発明家たちの工夫と努力の産物だった。
木綿工業に始まった技術革新はやがて蒸気機関を開発し、それがコークス製鉄法に利用され、石炭鉱業と製鉄業を結びつけて新しい工業の発展をうながした。
それはさらに交通運輸体系の大変革につながり、蒸気機関は近代への飛躍の動力源となった。この変動をフランスの「政治革命」にならって「産業革命」と名づけられた。
この技術革新は、人間の手を助ける道具ではなく、手そのものにとってかわる「機械」を工業分野に導入した。これによって労動力の節減はもちろんのこと、それまで知られていなかった大量生産がはじめて可能になった。
機械生産への移行とともに、手仕事の熟練や技術はもはや時代遅れとなり、一定の教育と訓練を受け、機械の性能を発揮させる新しいタイプの熟練労働が必要とされ、一方では多くの交代可能な単純労働が求められた。機械生産への移行と近代的労働者の出現は、資本主義的工業社会の基礎を形成したのである。
蒸気機関による動力革命
機械を動かすにはエネルギーが必要である。これまでは人力、畜力のほか風力・水力が利用された。しかし風力は得られるエネルギー量が不安定であり、水力は風力に比べ安定はしているが工場の立地が河川の流域に限られるという弱点があった。また生産が大規模になると、エネルギーの供給が追いつかなかった。こうした状況のもとで、熱エネルギーを運動エネルギーに変えて利用する方法が開発された。蒸気機関が登場した。蒸気機関が工業生産に直接役立つようになったのは、1785年にジェームズ・ワットの機関が紡績に利用されるようになってからである。
この蒸気機関の普及によって、イングランド北部のランカシャー州を中心に大規模な綿織物工場が集中し、工業都市が多数誕生した。
かつて小さな村であったところに、人口の多い都市が成長。活気漲る工業の中心地が出現。増大した人口の多くを近郊の農村から吸収。
1712年にトマス・ニューコメンが完成した大気圧機関やワットの蒸気機関は高さが10m以上もある大型のもので、アームやシリンダーを製作するのに鉄は欠かすことができなかった。鉄鉱石を熱で溶かして鉄をつくることは大昔から行われていたが、この時代まで鉄の溶解と精製に用いる燃料は木炭だった。木炭の熱量は少なく、大型機械の製作などのように鉄を大量使用するには多量の木材、森林資源が必要とした。木材の乱伐による森林の枯渇が起こった。
石炭はすでに昔から使用されていて、木炭よりはるかに大きな熱量を得ることができた。木炭にかえて石炭の使用を考えるものは多かったが、石炭を使ってつくった鉄は炭素を多く含んで、もろくて使いものにならなかった。それを克服する第一歩となったのが、火力の強いコークスを使って鉄を溶かす方法だった。
開発したのはイングランド西部のコールブルックデールの製鉄業者エイブラハム・ダービー1世だった。このコークス製鉄法とともに、1775年にワットの蒸気機関がコークスを燃やすときの送風用動力に使用されると、溶鉱炉は大規模になり、鉄の生産量も増大した。その後、83〜84年にヘンリ・コートが溝型ローラーによる鋼材の圧延法と擬拝式錬鉄法(パドル法)を完成し特許をとってからは、石炭を使った製鉄法がいっきに普及した。
交通の飛躍的発達。公道や運河の建設。陸上には機関車が走り、水上には蒸気船がゆきかうようになる。1830年代から50年代にかけて、イギリスは鉄道と汽船の時代をむかえる。
産業労働者という新しい社会階級がうまれ、新しい社会不安が生まれることになる。産業革命がおこると、工場経営者が機械の操業時間を延長したので、労働時間が朝の5時や6時から夜の8時や9時まで13〜16時間になった。女性や子どもの場合も同じであった。ようやく1833年の工場法以後、労働時間が制限される傾向がでてきた。9歳未満の児童を雇ってはいけない、11歳未満の児童の労働時間は9時間以内、18歳未満の労働時間は1日12時間以内とする。鉱山法では女性を地下で働かせてはいけないと決められた。しかし、男子の大人についてはなんの制限もなかった。それまでは、炭鉱の仕事は、父親がつるはしで石炭をほりくずし、これを運ぶのが母親や娘の仕事で、狭い坑道をよつんばいになって炭車をひっぱりだした。60kgの石炭をかごに入れてはしごをのぼるのも女の仕事であった。
ラッダイト運動
イギリスのノッティンガムにはじまる。まず「ネッド=ラッド」という署名入りの脅迫状が、新しい機械を入れた工場主のところへ送られてくる。ネッド=ラッドというのは、親方にしかられてかっとなって機械を壊した少年の名前だが、この少年が脅迫状をおくってくるわけではない。この脅迫状には、新しい機械の使用をやめろとか、労働者の賃金をもっと上げろとか書いてあり、言うことを聞かなければ機械を壊しにいくぞという、脅しの言葉がついていた。そして夜になると覆面をした何十人かの男たちがやってきて、機械を壊していくのである。打ちこわしは他の州に広がり、工場に放火するとか、工場主を殺すとか、ますます過激になっていった。政府もこれを放っておけず、「死刑にする」という法律をつくり、取り締まった。
機械を壊しても、世の中がよくなるわけでもないし、機械そのものが悪いのではない。やがて、労働者の権利を守るという方向にならなければならないことに気づいていく。
【産業革命の原因】
A イギリス産業革命の原因
1 広大な海外市場を獲得
植民地戦争に勝利、世界の海上権を握る → 広大な海外市場
2 (1 )の蓄積
問屋制や(2 )(工場制手工業)が発達
→ 大量の資本が蓄積、有利な企業をもとめる
→ 農業革命
@ 深層耕法、条播機の発明(1714年) 、四輪作農法
→ 農業生産力の向上
A 営利主義が発達(フランスとの戦争・人口の増加で、穀物が値上がり)
→ 第2次(3 )(エンクロージャー、全イングランドの20%)
→ 農民は農業労働者・都市の工場労働者に
農業資本家(近代的大借地農) は大規模農場を経営
3 豊富な(4 )
第2次(5 )(エンクロージャー) → 農民の賃金労働者化
4 豊富な資源 → 鉄・石炭
5 ニュートン以来の科学技術の発展 → 機械の発明
【機械の発明】
A 木綿工業の発達
1 最初の技術革新は(6 )工業の分野
インド産の綿織物の需要が高まる
→ 綿花の獲得が容易(カリブ海諸島・インドなどの綿花を原料)
→ イギリスに木綿工業が発達
2 木綿工業の機械発明
(7 )の(8 )(1733年)
ハーグリーヴズの(9 )(ジェニー)紡績機
(10 )の(11 )紡績機(1769年)
(12 )の(13 )紡績機(1779年)
(14 )の(15 )織機(1785年)
ホイットニーの繰綿機(アメリカ)
B 蒸気機関の発明
1 (16 )の蒸気力によるポンプ発明(1705年)
2 (17 )が蒸気機関を改良(1769年)
→ 紡績機や織機の動力として実用化
C 機械工業・鉄工業
(18 )父子のコークス製鉄法(1735年) 、コートの反射炉(1784年)
→ 石炭・製鉄業の発達
【交通・運輸機関の発達】
→ 原料・製品・鉄鉱石・石炭を早く安く輸送する必要
1 トレヴィシック − 最初の蒸気機関車の発明(1804年、ウェールズ)
(19 ) − 独自の蒸気機関車(1814年)
→ 鉄道による輸送がはじまる
ストックトン 〜 ダーリントン(1825年)、マンチェスター 〜 リバプール(1830年、ロケット号)
2 (20 )(1807年、アメリカ) − 蒸気船、ハドソン川・クラーモント号
→ 大西洋横断(1819年、サバンナ号)
【産業革命の波及】
A イギリス産業革命の結果
1 「21 」の地位
イギリス製品の氾濫 → 他国の産業圧迫(特にインドの綿工業没落)
2 機械の輸出(1825、機械の禁輸解除) → 各国の産業革命が開始
→ (22 )工業(機械による工場生産) が成立
B 各国の産業革命
1 ベルギー → 1830年代、鉄と石炭が豊富
2 フランス → 1830年の七月革命以降
資本と(23 )の不足 → 軽工業が中心
3 ドイツ、アメリカ → 19世紀後半に重工業・化学工業が発展
イギリスを追いこす
4 日本 → 19世紀末
→ 20世紀には、電気と石油が主な動力源
【資本主義体制の確立】
A 産業革命以前
資本主義による工業生産のはじまり
→ (24 )・(25 )(工場制手工業) − 手工業
B 産業革命後
機械を用いる大規模な工場が出現 → 大量生産で安い商品
→ 従来の家内工業・手工業は没落
→ 資本家が経済を左右。資本主義体制が確立
【産業革命の社会的影響】
A 人口の都市集中 → 大都市の成長
イギリスの(26 )(鉄と機械)、(27 )(木綿工業)、
(28 )(港。1830年、鉄道開通)など
B 労働問題・社会問題の発生
婦女子労働・低賃金・長時間労働(熟練不要、産業予備軍の増加)、劣悪な
生活環境
→ 労働者の機械破壊運動 = (29 )運動
☆ 重要語句
産業革命 農業革命 第2次囲い込み 木綿工業 ジェニー紡績機 水力紡績機
ミュール紡績機 飛びG 力織機 蒸気機関 世界の工場 ハーグリーヴズ
アークライト クロンプトン ジョン=ケイ カートライト ワット 交通革命
蒸気船 蒸気機関車 産業資本家 労働者階級 フルトン スティーヴンソン
マンチェスター バーミンガム リヴァプール
☆ 重要年代
イギリスの産業革命の開始
イギリス以外の諸国の産業革命がはじまった世紀
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