ドクトル・ジバゴ




 
 最初にこの映画をみたのは、学生時代。もう30数年前になります。   
 壮大なロシアの風景と全編を流れる「ラーラのテーマ」が、すごく印象に残りました。   
 今あらためてこの映画をみて、当時の記憶がすこしずつよみがえってきます。  
    
 あらすじ  
 時は20世紀はじめ。帝政ロシアの末期から第一次世界大戦、ロシア革命とそれに続く内戦時代を背景に、時代に翻弄されながらも詩人として、また純粋な愛に生きる人間としてのジバゴを描く名作である。  
 
 映画は、詩人でありまた医者であった主人公ユーリ・ジバゴ(オマー・シャリフ)。彼のの義兄、アレック・ギネス扮する赤軍の将軍イェフグラフが、ジバゴと彼が愛したラーラの間にできた娘トーニャに尋ねる場面からはじまる。   
 イェフグラフがジバゴについて話をはじめる形で映画はスタートする。   
   
 幼い頃に父母を亡くしたジバゴは、父母の友人であったグロニーコ夫妻に引き取られ、夫妻の娘ソーニャ(ジャラルディン・チャップリン)と兄妹同様に愛情深く育てられる。母の形見は楽器バラライカであった。  
 彼は医学を学ぶ傍ら詩人としても名をあげるようになる。   
 一方、仕立て屋の娘ラーラは帝政打倒の革命に情熱をもやす学生パーシャという恋人がいたが、母の愛人コマロフスキーと夜会にででかけた帰り、無理やり許されない関係になってしまう。   
 娘とコマロフスキーの関係を疑ったラーラの母親は服毒自殺を図る。そして、コマロフスキーは知り合いの高名な教授を治療によぶが、そのときジバゴも助手として同行する。そして、治療を終えたジバゴは、コマロフスキーに抱きつくラーラの姿を窓越しにみて驚く。   
 ラーラはコマロフスキーとの仲を清算するため、トーニャとの結婚を決意する、しかしラーラを愛したコマロフスキーは、「女にも二種類いる、お前は尻軽女だ」いって、ラーラを無理に犯してしまう。   
 ジバゴとソーニャの婚約が発表されたクリスマスパーティの席上、絶望したラーラは拳銃をもって、パーティに出席していたコマロフスキーを撃って傷を負わせてしまう。  
    
 1914年、ロシアは第1次大戦に突入し、ジバゴは医師として従軍する。そして戦場で看護婦として献身的に働くラーラに再会する。彼女はすでにパーシャと結婚しており、戦場に出た夫パーシャを探すため看護婦に志願していたのだ。そんな2人はお互いの人柄に強く魅かれ、愛し合いはじめていることに気づく。   
 やがて戦争が終わり、二人の別れの日が来る。ジバゴはラーラと別れモスクワに帰るが、革命によって事態は一変しており、家は接収されていて飢えと物資が不足する不自由な生活が始まった。グロニーコ氏と妻ソーニャ、息子サーシャとの生活は苦しかった。  
 そんなとき、革命政府の秘密警察官となっていた義兄イェブグラフは、ジバゴの詩が当局の批判をうけているため、生き延びるために田舎に移ったほうが安全だとすすめる。  
 そして、ジバゴは一家を連れて、ウラルのベルキノへと向かう。雪の平原を走る貨物列車とまわりの光景も大変印象に残るものであった。。  
 ベルキノへ向かう途中、ジバゴは白衛軍と間違えられて捕まってしまい、赤軍の将軍ストルイニコフの尋問をうける。そして、ジバゴは、ストルイニコフが戦死と報じられていたラーラ夫パーシャだと知る。また、彼からラーラがベルキノの隣のユリアチンの町にいることを知らされる。彼は変わりはて、今や社会主義革命のためには個人の愛情や思いやりをも無視する非情な男になっていた。  
 ジバゴたちのベルキノでの生活はつつましくも、穏やかなものであった。  
 やがて冬が終わり春が来、ジバゴはユリアチンの町でラーラと再開する。二人は自分たちの気持ちをどうしようもなく強く抱きあう。  
 しかし、2人目の子供をみごもった妻の姿に、ジバゴはラーラと別れる決心をし、そのことをラーラに告げるのである。ラーラと別れたジバゴは、ユリアチンの町からの帰途パルチザンに捕まり、医者を必要としていたパルチザンは、彼を無理やり連れ去ってしまう。 
 ジバゴは戦乱を逃れた人々に紛れ、パルチザンから脱走する。そして、やっとの思いでユリアチンのラーラの家にたどりつく。そこにはラーラが彼を待っていた。彼はそこで、ラーラ預かっていた妻からの手紙を見る。その手紙で、ベリキノの妻や子どもがすでにモスクワに移り、そしてロシアから追放されてパリへうつったことを知る。ラーラは彼の妻から母の形見である楽器バラライカを預かっていた。
 そこへコマロフスキーが部屋を訪ねてくる。ジバゴがパルチザンを脱走したことや、ラーラがすでに粛清の対象となっていたストルイニコフの妻であることをつげ、身に危険が迫っていることを知らせる。ラーラを愛したコマロフスキーは、彼らを助けるためウラジオストックへ同道するように申し出るが、ジバゴは彼を部屋から追い出してしまう。
 ジバゴとラーラは町をでてベリキノへうつる。
    
  ベリキノでのひと時のラーラとの生活。  
 そこで詩「ラーラ」を書く。
   
 「もっと早くあなたにであいたかった」  
 「平和だったころに」  
 「結婚して、子どもも産まれて」  
 「子どもを持てるなら、男か女かどちらがいい」  
 「そんなことを考えても、つらいだけだ」  
 「私はいつも考えている」
   
 そこへ、再びコマロフスキーが現れた。彼はジバゴに、ストルイニコフが捕まって自殺したことを報せ、妻であるラーラに危険がせまっていることを話して、ウラジオストックへ同行するようジバゴを説得する。コマロフスキーもまた深くラーラを愛していたのである。ジバゴは後から行くといって、ラーラを送り出す。ユリアチンでジバゴを待つラーラ、しかしジバゴはついに現れない。軽蔑するコマロフスキーの援助をうけることはできなかったのである。そしてコマロフスキーはジバゴの子を身ごもっていたラーラをつれて極東に去った。  
   
 そして8年後。モスクワにいたジバゴは、市街電車の中から、偶然、街路を歩くラーラを見つける。電車をおり必死にラーラを追おうとするが、すでに心臓を病んでいたジバゴは、突然発作を起こして死んでしまう。  
 ジバゴの作品は当局によって発禁されていたが、驚くほど多くの人がジバゴの葬儀に参加した。
 「詩を愛する人は詩人を愛する。ロシア人ほど詩を愛する国民はいない」  
 葬儀の場で、ジバゴの義兄イェブグラフはラーラに声をかけられる。彼女は、極東で戦いのなかで離れ離れになった娘を探すためにモスクワに来ていたのだ。娘を探すため助けてほしい、と。  
 二人は手を尽くして娘を探すが、見つからない。ラーラもそのうち行方不明となってしまう ─ イェブグラフは強制収容所に送られたと推測する。
 
 そしてまた何年か過ぎた。イェブグラフはダムの建築現場で働く若い娘トーニャを探し当てた。彼はトーニャにに、彼女がジバゴとラーラの子どもであること、そして両親のことを話してきかせ、ジバゴの詩集を贈る。
 帰るトーニャは肩にバラライカをかけていた。イェブグラフは、トーニャに声をかける。  
 イェブグラフ、「トーニャ、バラライカを弾けるのか」  
 トーニャの恋人、「引けるどころか。名手ですよ」  
 イェブグラフ、「誰にならった?」  
 トーニャの恋人「誰にも習っていません」  
 イェブグラフ、「ああ、では血筋だな」  
   
 深く感動の余韻の残る映画でした。デビット・リーン監督の映像の美しさ、モーリス・ジャールの音楽、全編を流れる「ラーラのテーマ」、どれ一つをとっても名作の名に値する作品です。  
     
 監督  デビッド・リーン
 キャスト  
 オマー・シャリフ(男優) ユーリー・ジバゴ  
 アレック・ギネス(男優) イェブグラフ  
 ロッド・スタイガー(男優) コマロフスキー  
 トム・コートネイ(男優) パーシャ  
 ジェラルディン・チャップリン(女優) トーニャー  
 ジュリー・クリスティー(女優) ラーラ  
 リタ・トゥシンハム(女優) ジバゴの娘  
 原作 ボリス・パステルナーク  
 脚本 ロバート・ボルト  
 音楽 モーリス・ジャール 主題曲「ラーラのテーマ」  
 製作 カルロ・ポンティ